「50代からの新しい挑戦!」
私がそう意気込んで飛び込んだのは、一人一泊5万円もするような、憧れの高級温泉旅館でした。
面接では、経営陣の熱い想いや、「頑張れば肩書きも得られる」という言葉に心底共感し、「この人のもとで働きたい!」と強く思ったものです。
元キャディとして体力には自信もあり、お客様を「おもてなし」することにはやりがいを感じていたので、きっと大丈夫だと信じていました。
しかし、現実は想像以上に厳しいものでした。
こんなはずじゃなかった!と後悔しないためにも、ぜひ最後までご覧ください。

この記事はこのような人におすすめ!
・旅館のお仕事の実態を知りたい
・お仕事選びのポイントを知りたい
・転職を成功させたい!失敗したくない人!

憧れの旅館勤務?私が直面した理想と現実のギャップ
配膳・清掃は修行!?想像を超えた肉体労働の日々
仕事を始めて私の目に映ったのは、想像していた華やかな接客業とはかけ離れた、まるで修行のような日々でした。
入社したての私は、朝食の配膳がメインのお仕事でした。
配膳や皿洗い、清掃はパートさんがメインで行っていました。
社員として入社した私は、一通り全部の仕事を覚えることが先決です。
そのために、パートさんに教えてもらいながら覚えていくことからスタートしました。
ひたすら続く掃除や配膳、皿洗いの繰り返し。

接客の基礎を学ぶ以前に、下積みのような重労働の日々。
私の働いていた旅館は、お料理のこだわりも強く、食材も完成したお料理も素晴らしいものでした。
高級を謳っているだけにお皿のクヲリティも高いものばかり。
小鉢や重たいお皿、土鍋なども多く、配膳には細心の注意を払わなくてはいけません。
見た目は美しいが、不安定なグラスもあります。
厨房から母屋の食事処には、靴を脱ぎ履きして小上がりを上り下りしなくてはいけません。
手には重たい土鍋や不安定な食器が乗ったお盆を抱え、なかなかの重労働です。

宿は母屋に泊まれるお部屋が一箇所と、それ以外は全て離れ。
そのうちの一箇所はお部屋食ができました。
そのお部屋に配膳する行き来がとんでもなく大変で重労働でした!
正直なところ「根性なし」の自分は耐えられませんでした。キャディの経験から体力には相当自信はあったのに、年齢は隠せません。
今振り返れば、私の考えが相当甘かったのですね。
労働時間の考え方が会社員マインドでは通じない
旅館業は、一般的なオフィスワークのように「定時にきっちり終わる」という概念がないように思われます。
私が勤務していた旅館にはそもそも、タイムカードがありませんでした。
残業という感覚も希薄だったろうと思います。
1日の労働時間、〇時間、という考えは持たない方がいいです。
お客様に最高の時間を提供するために、勤務時間など関係ないというスタンス。
その社員さんたちのマインドには驚きを隠せませんでした。
『○時からのお仕事だからこの時間に出勤する』
ということもなくて、本当に自主的に早め早めの出勤をされていました。
その社員さんたちの行動を見て、私自身が同じマインドで仕事に向き合う自信がないと痛感!
入社してわずか4日目で悟り、退職の意向を伝えるに至ったのです。

どんな働き方をしたいのか、総合的に考えることの重要性
この経験から、自分の宿泊業に対するあまりの甘さを痛感しました。
「やりがいのある仕事を!」と求めていたにもかかわらず、「自分は仕事に対してそれっぽっちの気力しかないのか」と、自分自身を残念に思う気持ちでいっぱいになりました。
しかし、この短期間の経験は、私にとって決して無駄ではありませんでした。
自分ではなかなか足を踏み入れられない高級旅館の内情を知り、
仕事選びにおいて本当に大切なことを見つめ直す貴重な機会を得たからです。
もし、あなたが私と同じように転職を考えていて、特にサービス業や異業種への挑戦を考えているのなら、この私の「失敗談」が、あなたの仕事選びの落とし穴を回避するためのヒントになれば幸いです。

事業主マインドを理解しているつもりだった私。
でも、いざ体験したら、時間にとらわれないプロ意識の前に完敗…!
自分の甘さを痛感したけど、この気づきを今後に生かそう!
正社員としての働き方だけでなく、近年は多様な働き方が広がりを見せています。私自身も、今回の経験を経て、より柔軟な働き方を模索するようになりました。
求人内容における確認すべき「具体的な業務内容」
以上の失敗を経験して、仕事選びの際に改めて重要だと思うポイントをご紹介します。
仕事の具体的な内容を深掘りして確認する
求人に書かれているお仕事の内容を深掘りして見ていきましょう。
「旅館サービスと運営全般」と記載があれば要注意!その言葉の裏側を読み解く
転職活動をしていると、求人票の「仕事内容」の欄に、魅力的ながらも漠然とした表現を見かけることがありますよね。
私が転職活動中に目にした高級旅館の求人にも、
「旅館サービスと運営全般」
という言葉が、まるで理想のフロントスタッフの姿を描いているかのように一番上に書かれていました。
「わあ、これは旅館の根幹に関わる重要な仕事に携われるチャンス!」
と、漠然とした期待を抱いていました。
フロントスタッフとして、お客様対応や予約管理、会計業務といった「花形」の仕事全般を任せてもらえるのだろうと、勝手に想像を膨らませていたのです。
まさに、私が思い描く「理想のフロントスタッフ像」そのものだと感じていたわけです。
しかし、実際に働き始めて、その認識がいかに甘かったかを痛感しました。
「旅館サービスと運営全般」という言葉は、確かに間違ってはいません。しかし、その「全般」には、私が想像もしなかったような
多岐にわたる、そして体力と根気を要する「下積み」の業務が大量に含まれていたのです。

もちろん、この下積みを経験しながら成長し、「旅館サービスと運営全般」を賄えるようになるのが旅館スタッフとしてのゴールだと思えば、当然経験を積まなければいけない業務には違いありません。
お食事の提供(料理の配膳、説明等)
配膳と聞くと、単発のアルバイトでもよく見かける、比較的「誰にでもできる簡単なお仕事」というイメージを持つ方が多いかもしれません。
しかし、お客様に最高のおもてなしを提供する上で、
お食事の配膳こそが、最も重要かつ、フロントスタッフとしての基礎を築くウェイトの高い仕事の一つ です。
単に料理を運ぶだけではありません。そこには、
緻密な時間管理と連携: 温かいものは温かく、冷たいものは冷たく。お客様の食事の進み具合を見ながら、最適なタイミングで次の一品を提供するための、厨房との絶妙な連携と迅速な動きが求められます。

料理への深い理解と説明力: 一つ一つの料理に使われている旬の食材、調理法、そして料理に込められた料理人の想いを、お客様にわかりやすく、魅力的に説明する知識と表現力が必要です。アレルギーや好みに合わせた細やかな対応も欠かせません。
お客様の観察力と気配り: お食事中の会話や表情から、お客様の満足度を察知し、必要であればお声がけする、あるいはそっと見守るといった、高度な気配りが求められます。
体力と正確性: 重いお膳を運び、何度も客室と厨房を往復する体力。そして、決して料理をこぼしたり、誤って配膳したりしない正確性も不可欠です。

これらはすべて、お客様に「最高の時間」を提供するための、欠かせない要素です。
高級旅館の「おもてなし」の真髄は、まさにこの配膳業務に凝縮されていたのです。
配膳業務は、一見地味に見えても、高級旅館のサービス品質を支える根幹であり、新人スタッフがまず通るべき「修行の道」です。
そして、この経験なくしては、お客様の心に寄り添う真のサービスは提供できないのだと、身をもって知ることになったのです。
客室や周囲の清掃業務など
客室や周囲の清掃業務に見る、旅館の「おもてなし」の真髄
配膳業務と並び、私が驚きと共に深く学んだのが、客室や館内の清掃業務でした。
清掃と聞くと、「パートさんがメインでやる仕事」という認識が一般的かもしれません。もちろん、多くの旅館やホテルで、清掃のプロフェッショナルであるパートさんたちが日々の業務を支えています。
しかし、私が働いた高級旅館では、新人の正社員も例外なく、まずこの清掃業務から徹底的に経験する必要がありました。
なぜなら、現場で指導する立場の社員が、清掃の細部や大変さを知らずして、質の高いサービスを語ることはできないからです。
旅館業とは、ある意味**「主婦の延長のような仕事」**
私たちは毎日の生活の中で、当たり前のように「衣食住」を営んでいます。
しかし、高級旅館は、その「当たり前」を、お客様に**「素晴らしい環境下で、より快適に」**提供し、高い対価をいただく場所です。
そこには、ただ綺麗にするだけではない、極めてきめ細やかな配慮と、プロとしての仕事が不可欠です。

お客様が「非日常」を体験し、心からリラックスして過ごすための「付加価値」を提供すること。
清掃は、単なる裏方業務ではなく、お客様に感動を与える「おもてなし」の最前線とも言えます。
憧れだけじゃない!求人「幅広い業務内容」の現実
では、このような抽象的な求人表現に出会った時、応募者はどう捉え、どう行動すべきなのでしょうか?
「旅館サービスと運営全般」と書かれている場合、それは、往々にして以下のメッセージを含んでいる可能性があります。
幅広い業務をこなす覚悟が必要
文字通り、特定の業務に限定されず、旅館運営に関わるあらゆる仕事に携わる可能性があります。
それは、お客様と直接顔を合わせるフロント業務だけでなく、清掃、配膳、洗い場、時には修繕の補助など、裏方の仕事全般を含むと考えるべきです。
特に中小規模の旅館や、人手が少ない職場では、一人のスタッフが何役もこなすのが当たり前という実態があります。
ジョブローテーションや下積み期間がある
最初から全ての業務を任されるわけではなく、まずは基本となる清掃や配膳といった「下積み」を経験する必要があります。
旅館全体の流れやお客様への細やかな気配りを学ぶ期間がある、ということを頭に入れておきましょう。
「理想の仕事」に辿り着くまでに、想像以上の時間や労力が必要になるかもしれません。
個人の適性や状況に応じて業務内容が変わる
採用された後、個人の能力や経験、あるいはその時の人手不足の状況などによって、配属される部署や任される業務が流動的に変わる可能性があります。
そのため、具体的な業務内容を固定して書けない、という側面もあるでしょう。
特定の専門性よりも、総合的な対応力を求める
フロント業務のスペシャリストというよりは、旅館全体を見渡し、どのような状況にも対応できるオールラウンダーを求めているサインでもあります。
私が推奨する求人確認のポイント
求人情報に「旅館サービスと運営全般」とあれば、ぜひ以下の点を積極的に確認しましょう。
「理想の接客」はいつから?業務割合とステップアップの確認
入社後、最初の1ヶ月、3ヶ月、半年で、どのような業務に携わることになるのかを、具体的に確認する
日々の業務の中で、最もウェイトを占めるのはどのような業務であるかを知っておく
お客様と直接関わる業務(フロント、接客)は、いつ頃から、どの程度の割合でできるようになるかを聞いておく
OJTとマニュアルの有無で見る「教育体制」の実態
業務を覚えるまでのOJTはどのように行われるのか確認する
業務マニュアルの有無を確認しておく
「頑張れば昇進」は本当?キャリアパスとモデルケースの確認
将来的に、どのようなキャリアパスが考えられるか聞いておく
「理想の一日」は本当?社員のタイムスケジュールと現場見学
社員さんの、一日の業務スケジュールや流れを確認しておく
できれば、お仕事の現場を見せてもらう。
私の失敗談が、あなたの未来をかえるきっかけに
これらを確認することで、自分の頭の中にある「理想」と、採用側が求める「現実」の業務内容とのすり合わせを徹底することが、ミスマッチのない転職成功への鍵となります。
「旅館サービスと運営全般」という言葉は、魅力的に聞こえるかもしれませんが、その「全般」の中身をしっかり見極める力が、これからの仕事選びには不可欠です。私の経験が、あなたの次の挑戦の役に立てば幸いです。

今なら痛いほどわかる、この道のり。
もしあの時、この『現実』を知っていたら、きっと乗り越えられたはず。
私の経験が、あなたの未来を照らす確かな一歩となりますように!